桜と少年

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 広葉樹の隙間からこぼれ落ちる朝日に目を細めて、僕は今日も坂道を登る。  まだ早い時間のためか、辺りに人はいない。  しばらく坂道を登ると見えてくるのは、県立十名(とめい)高校。  市内にある山の中腹に建てられた学校だ。  学校の高度とは反比例して偏差値はかなり底く、校名の『とめい』とかけて『すべりどめい』高校なんて呼ばれている。  残念なことに僕の通っている学校だ。  僕がこの学校に通っているのも、本命に落ちてしまったからだ。 「はぁ……」  ため息を一つ吐いて、また坂道を登る。  入学して一月ほどたつが、僕は未だ学校に馴染めていなかった。  表情の薄さと人見知りで、暗いやつだと思われてしまったんだろう。  さらには部活もやらずに帰宅部をしているため、共通の話題もない。  だが―― 「今日こそは、頑張ろう」  僕の今の目標は友達をつくることだった。  
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