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「泥棒って、ここで何を盗むのさ」
「…………その発想は、なかった」
驚いた様な顔で彼女は言う。
出会ったばかりでこんなことを思うのは悪いが、どうやら彼女は少し頭が残念らしい。
「っていうか、キミこそそんな格好でどうしたの、学校始まっちゃうよ?」
「えへへ、良いでしょ。昨日丸井で買ったばっかりで、嬉しいから着ちゃった」
「えぇっ、そんな理由で着物なの!?」
「そんなって酷いなー。私だっていつもの着物にしようか随分悩んだんだよ?」
「いや、着物って言ってる時点で間違ってるからね!」
僕が指摘すると、ちょっとどころか大分おかしな女の子はむうと口を尖らせる。
「そんなに細かいことばっかり言ってると、友達できないよ?」
「こ、細かくないし、的確に僕の心を傷つけないでよ」
「へ?もしかしてキミって友達いないの?」
「いないというか、その……」
「いないんだ、可哀相」
言い淀む僕を、哀れみの表情で容赦なく切り捨て女の子。
正直泣きそうだった。
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