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[ せんせー? ] 休み時間だというのに 何人かの女子生徒が、問題文を 抱えながら聞いてくる。 勉強熱心でいい生徒だ、うん。 [あ、すまん。 ボーッとしてた。で、何だ? ] [ ここの問題が] [ ああ、わかった。] 夏川 悠平、 24歳の国語教師。 俺は、大人になった。 ちなみに、 【ナッツせんせー】という あだ名は夏川からきてるらしい。 […………はぁ………。] 溜め息がでる。 [ どーしたんですか? ] [ いや、 ちょっとな……。] ひょいと、灰月 神姫が 俺の顔を覗き込んだ。 [ 溜め息はダメですよー。 幸せが逃げちゃいますから。] 灰月 神姫は、 俺が担当するクラスの生徒だ。 明るく、ポジティブで 成績優秀で可愛いと評判の いい生徒だ。 [ そーだな………。] まただ。 何気なく生きて、 それなりに楽しんで生きて、 後悔ばかりしてる。 俺だけが、 進んでしまったようで。
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