2.ただの先輩ではありません

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  「失礼しました」  冊子を届け終え職員室から出る。先生達の授業中に何やってんだよ的な視線が痛い。 「ありがと、助かったわ」  静谷さんがそう言って軽く頭を下げてきた。 「いや、そんな全然」 「やっぱり結原君って優しいのね」  またそんな事を言われた。嫌な訳じゃないけど少し恥ずかしい。それに、本当に俺は優しくなんかない。 「そんな事ないですよ」  俺がそう返すと、静谷さんはにこりと笑う。謙遜だと思われてそうだ。 「あっ、そうだ、アドレス教えてくれる?」  教室棟に戻った所で、静谷さんが携帯を取り出してそう言ってきた。黒猫のストラップが付いた白い携帯だ。 「あ、アドレス……?」 「えぇ、今携帯持ってない?」 「も、持ってます持ってます」  俺は慌てながらポケットから携帯を取り出した。どうしてこんなに慌ててるんだろう、そんな事を思いながら赤外線通信の画面になったのを確認し、静谷さんの携帯に近付けた。 「困った事があったら何でも言ってね。猫の事でも学校の事でもね」 「はい、ありがとうございます」  俺がそう言うと静谷さんはまた微笑み、自分の教室へと向かっていった。  
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