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「も、もしもし?」
『あ、もしもし結原君? 今電話しても大丈夫かしら?』
「あ、はい。大丈夫です」
電話でもやっぱり上品な感じの静谷さん。なんだろう、何か凄く緊張するな……
『メールに書いてあった事、詳しく聞きたくて』
「あぁ、はい。えっと……」
メールに書いたのはヨシノの事だ。俺になつかない、近付くと威嚇されるという事だ。
『そうねぇ……エサは誰があげてる?』
説明し終わると静谷さんはそう訊いてきた。
「う~ん……たぶん希があげる事の方が多いです」
『なら結原君があげるようにすると良いわ。エサを手に乗せて食べさせたりすると良いわよ?』
携帯越しにそんな声が聞こえてくる。確かにそれは良いアイデアかもしれない。けど……
「俺が手を出すと噛むんですよ」
『あら、そうなの? 噛まれた時はどうしてる?』
「とりあえず噛み終わるまで待って、それから……」
『ダメね』
俺の意見はその声に分断された。
『それだと結原君の手は噛んでも良い物だって思われちゃうわ。悪い事をしたらちゃんと叱らないとダメよ?』
あぁ、道理で毎回噛むわけだ。ヨシノから見た俺は本当に標的にしか見えてないのか。
ふと携帯越しに踏み切りのサイレンが聞こえてきた。学校の近くに踏み切りがある。きっとその音だろう。
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