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「ほらナオ、早く迎えに行って!」
「いやいや、本気で言ってるのか?」
「当たり前でしょ! 早く着替えるっ!」
希に背中を押され、俺は仕方なく階段を上がり部屋に向かった。私服に着替えて1階に戻ると、希は台所で鼻歌混じりに鍋を見つめていた。
「ナオ早く早く! お嬢様先輩待たせたらダメだよ!」
とりあえずそのお嬢様先輩ってのは何とかならないだろうか。お嬢様だし先輩だし間違ってはいないけど2つ合わせるのはどうかと思う。
「はぁ……で、どこにいるって?」
「え?」
「いや、だから静谷さん。どこに迎えに行けば良いんだ?」
「……えっ?」
えっ? じゃねぇよ! 聞かなかったのかよ!
「あははっ、ごめんごめん、忘れてた」
そう笑う希に俺はため息をつき、静谷さんの携帯に電話をかけた。さすがに踏み切りの前でずっと待ってはいないだろう。
「もしもし? すみません、どこに行けば良いですか?」
そんな事を言うと、案の定静谷さんははくすりと笑った。
『スーパーでお願い。私がバイトしてる所』
あぁ、あそこか。俺は「わかりました」と言って電話を切り、家から出た。
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