2.ただの先輩ではありません

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   俺の家に行くのに、俺が静谷さんの後ろを歩くのはどうかと思う。道は合ってるから別に良いんだけど。 「ところで、スーパーに何しに行ってたんですか?」  俺はなんとなくそんな事を訊いた。学校から俺の家とスーパーは逆とまではいかないけど違う方向だ。 「えぇ、これよ」  静谷さんがそう言って鞄から缶詰めを取り出した。猫のエサだ、子猫用の。 「なんか万引きしたみたいに見えますね」  それを見て俺はそう言う。袋も何も無いもんだから本当に万引きしたようにしか見えない。 「えぇ、よくわかったわね」 「えっ?」 「大丈夫よ、あのスーパーだけでも年間の被害額は1000万以上だから。300円なんて安いでしょ?」  え、えぇぇえ……? 何言ってるんだこの人は……まさか本当に万引きしたのか?  いや、だってこの人お金持ちなんだしそんな事する必要なんて…… 「ふふっ、結原君って素直なのね。はい、これレシート」  静谷さんがくすりと笑って財布からレシートを取り出した。缶詰めの名前がしっかりと書かれている。  ま、また遊ばれた…… 「結原君ってエイプリルフールには絶対に嘘をつかれるタイプね」 「おっしゃる通りです……」  親から友人から希から、更には駄菓子屋のおばあちゃんにまでエイプリルフールには嘘をつかれる。俺ってそんなに騙しやすい性格なんだろうか。
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