2.ただの先輩ではありません

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  「そんな、悪いわよ。このコードだけでも持つわ」 「いや、大丈夫ですって」  俺がそう言って歩き出すと、静谷さんはコードを引っ張ってくる。俺はそのまま歩き続けて部屋を出た。  ガツッ  足元から妙な音がして、視界が斜めになった。部屋の仕切りで躓いたらしい。  ってちょっと待て俺Wii持ってるから手使えないんですけど。このままだと壮大に尻餅をつくという色んな意味で痛い事になってしまう……  覚悟をして目を瞑ると、柔らかいものに支えられて俺の体は止まった。 「大丈夫? ごめんなさい、ちょっとふざけすぎたわね」  目を開けて振り返ると俺の顔とほとんどくっつきそうな距離に静谷さんの顔があった。支えてくれているんだろう、静谷さんの両手が俺の腹に回っている。そして肩甲骨辺りにちょうど柔らかい感触が…… 「す、すみませんっ!」  俺は慌てて体制を立て直して静谷さんから離れた。 「あ、いえ、私は大丈夫よ?」  静谷さんは手を小さく振りながらそう答える。少し顔が赤いから、やっぱりちょっとまずかったんだろう。 「本当にすみません……」 「い、良いのよそんな……」  静谷さんがそう言って首を振る。気まずい空気から早く逃れようと1階に向かおうしたら、静谷さんは顔を赤らめながらにこりと微笑んだ。 「そんなに言われると……恥ずかしいわ」  それは今までの上品な微笑みとは違う、子供のような照れ笑いだった。  心臓が1度ドクンと大きく動いた。俺は何も返せずに階段を降りていく。  あぁヤバイ。今のはヤバイ。何かクラッと来た。落ち着こうと深呼吸するとどういう訳かさっきの背中の感触が戻ってきたので、俺は小走りでリビングに向かった。
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