2.ただの先輩ではありません

32/33
1119人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ
  「お嬢様先輩の家ってどこなんですか?」  歩いている途中で希が言った。家を出て20分くらい経ち、ちょうど静谷さんがバイトをしているデパートが見えている。 「あと5分くらいよ」 「あっ、近いんだ。今度遊びに行っても良いですかっ?」 「えぇ、もちろん」  静谷さんは相変わらずの上品な口調。この人の家ってどんな家だろう。噂になるぐらいだし結構な豪邸だったりするのかな。歩いてていきなり花輪君の家みたいなのが見えてきたらどうしよう。 「ここよ。ここが私の家」  静谷さんがそう言って立ち止まる。その前にあった家は…… 「わぁ…………」  花輪君までは行かないが、かなり立派で大きな家だ。少なくとも田舎にはとても合わない。 「結原君、希ちゃん、送ってくれてありがとう」  家の門の前で静谷さんがそう言って頭を下げてきた。 「い、いえっ、とんでもないですっ」  希がどういう訳か敬礼のポーズをしてそう返した。緊張してるみたいだ。確かにこんな豪邸を前にしたら緊張してしまう。  静谷さんはくるりと振り返って歩き出し、家の中に入っていった。その姿にさっきまで猫の前で寝転んだり、希の不可思議な料理を食べたり、ましてや格ゲーをしていたような雰囲気は無く、どこから見てもお嬢様そのものだった。  
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!