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「すっごいなぁ……」
静谷さんが家の中に入っていった後も、希は歩こうとはせずに静谷さんの家を眺めていた。開いた口が塞がらないとはまさにこの事だろう、卵がすっぽり入るくらい口が開いている。
「ほら希、帰るぞ」
「あっ、う、うん!」
希の口がようやく閉じ、足が動き出した。でもその気持ちもわからなくはない、俺だって1人だったら呆気に取られて希みたいになってたかもしれない。
「すごいなぁ~、本当にお嬢様なんだね~」
「あぁ、俺もびっくりした」
さすがにあそこまでだとは思わなかった。もしかしたらメイドとかいたりするのかな。
「いつ行こっかな~、楽しみだな~」
ルンルン気分で歩いている希。足取りもかなり軽い。
「間違いなく場違いだな」
「あ~ひどい!」
希が頬を膨らませた。残念だけど事実だ、希みたいに食事中にすら黙れない人は絶対に場違いだろう。俺もたぶん場違いになるけど。田舎者だし。
「ねぇ、ナオ」
「ん?」
希が急に足を止めてそう言った。
「ナオってさぁ、もしかして……」
希はそこで言葉を止める。俺は希の方を振り返って表情を見ようとしたけど、街灯まで遠くあまりよく顔が見えない。
「あっ、コンビニ発見! フライドチキン食べる!」
「はっ? あ、おい待て! 今何か言おうとしただろ!」
あぁもうダメだ、あいつの考えは全くわからん。俺はため息をついてコンビニに走っていく希を追いかけた。
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