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中学3年生、秋。
高校受験を来年に控えた僕は、学校での授業を終えると、駅前の小さな学習塾に通っている。
その日は社会の百問テストがあって、90点未満はやり直しだぞ、と散々先生に脅されていたから、勉強のために早めに塾を訪れた。
雑居ビルの二階、ガラス張りのドアを開けると、弱音で洋楽がふわりと流れてきた。
続いてシトラスの香り。
塾長の趣味で、この塾はいつも、塾らしからぬ雰囲気を醸し出している。
よく営業後も残って、夜遅くまで塾内改造にいそしんでいるらしい。
古いビルなのに、この塾だけ別空間を作り上げていた。
それでも、観葉植物の緑が並ぶ棚の中には、五教科の教材がずらりと並んでいるわけだが。
変なこだわりのおかげで、最近、この風変わりな塾は、若いお母さん達に人気があるらしい。
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