鬼物語。

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「愚かな餓鬼だ、こんな時に村に近づくなんぞ」 俺は弥彦を抱き、立ち上がった。 「…音哉さん、ソレを渡してくれ。 我々で葬る」 俺の心は静かだった。 「お前達は、こんなことを永遠と繰り返すつもりか?」 「…なに?」 村長だけでなく、村人達も動揺する。 「…鬼の呪いは、お前達が変わらない限り永遠に解けないだろう。 …これから先も、鬼の子は産まれ続けるぞ」 村人達の顔が恐怖に歪んだ。 村長は、眉間にしわを寄せ俺を睨む。 「なぜ理解できない、受け入れられないんだ」 俺は歩き出す。 村人達は俺が近づくと逃げるように離れ、道を開けた。 俺は弥彦を抱え、村から出て行った。 ゆっくりと山道を歩いて行く。 いつのまにか、弥彦と初めて会った木陰に来ていた。 歩みを止め、林を見た。 弥彦が、笑った気がした。  
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