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黒い何かは生き物だった。
良く見ると呼吸をしているかのように、上下に動いていた。
「……探さなきゃ」
少年は今にも消えそうな声で言った。
「見つけなきゃ」
少年の言葉に対して、黒い生き物は答えなかった。
ただ静かに呼吸をするだけだった。
少年は一歩踏み出した。
その一歩は頼りなく、フラフラとして今にも転びそうだった。
そして少年は一歩、また一歩とゆっくり歩き始めた。
建物の残骸で何度か転びそうになったが、
なんとか踏み止まり、焼け跡の外まで歩いた。
焼け跡から出て、少年は力尽きたように雪の上に座り込んだ。
少年は長距離走を走った後
みたいに荒く息をしていた。
「……探さなきゃ」
少年は自分に言い聞かせるように言うと、
立ち上がり、再び歩き始めた。
「絶対に見つける、トモダチを」
そして少年はゆっくりと、
ゆっくりと、
何もない雪山を歩いていった。
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