†第Ⅰ話†

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春の始め、 凍えるような冬が終わり、 雪山の雪もおとなしくなり、 木に緑が見えてきた頃、 雪山のふもとにある一軒の小屋から、一人の少年が出てきた。 少年は16歳ぐらいで、丈夫そうなリュックを背負っていた。 少年の後を追うように小屋からもう2人、優しそうな老夫婦が出てきた。 少年は老夫婦の方へ振り返った。 「長い間お世話になりました」 「もう行ってしまうのかい? まだゆっくりして行っても良いんだよ?」 老婆は悲しそうな顔でそう言った。 少年は静かに顔を横に振った。 「ゆっくりは十分すぎるほどしたよ。そろそろ行かないとトモダチが待ちくたびれるだろうしね」 それでも老婆は納得はしてないようで、まだ何か言いたそうな様子だった。 少年も困ったように頭を掻いていると、今まで無言だった老夫は老婆の肩に手を置いた。
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