おねだり願望。

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  「言えるか!」 「あっそ」 またノートに手が掛かる。 「わーっ! 解った! 解りましたぁっ」 今度は腕を掴み、嫌々と首を振った。ノートを取られてはどうにも出来ないのだ。破壊的にこの教科が苦手だから。 俯くのは一瞬。覚悟を決めて紡ぐ。 「……キス、して?」 誰かに聞かれていたらとか誰かが来たらどうしようとか、そんな思いと羞恥に顔を赤らめながら。 「それ、やばい」 目前の男はかぁと頬を染めて顔を背けた。 「バッ……! お前が言えって言ったんだろ!」 「こんな破壊力があるとは思わねぇだろーがっ」 「そんなこと知らん――」 反論は遮られた。押し当てられた唇によって。 「なっ……!」 「ごちそうさま」 「――っ、バカ野郎」 嬉しそうに笑って言うから、怒る気は失せる。そもそも、端から二人は好き同士なわけだが。 「おねだりまたしろよ」 「恥ずかしいだけだから、もうしない」 課題を届けた廊下では手を繋ぐ二人だった。 end. 2010/11/7  
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