遭い、変らず

2/2
前へ
/13ページ
次へ
冷静に考えるとあれは夢だったとわかる。 醒めてみれば、他愛のない、ただの夢だ。 現実的にありえないことはたぶん夢だ。 だから、これも夢だろう。 ・・・海に行く。 そう約束していたはずだ。 予定では今日の十時に集合。 もうだいぶ過ぎている 「遅い・・・」 「遅いね」 奴は時間にルーズな方じゃなかったはずだ。 携帯に何度もかけたが、出る気配がない。 さてどうしたことか。 まだ来ない。 何時になったら来るんだろうか。 そうして半時くらい待っていると、急に空に暗雲があらわれ始めた。 真っ黒な雲だ。 雲が流れて真上にくると、日の光は遮られ、必然的に辺りは暗くなった。 そして、雨が降りだした。 暗闇の中、大粒の水滴が降る。 水滴は容赦なく体をうつ。 その無心な打撃に痛みを覚えた。 「俊樹くん、大丈夫?」 その声に、夢から覚めたような感覚。 「あ、いや、大丈夫だ。志麻は・・・」 そこに志麻はいなかった。 それどころか辺りに人影ひとつ見当たらない。 どう考えても異常なことだ。 いや、大雨の中、出歩く人がいないのは普通の事かもしれないが、目の前で人が消えるなんて事は普通なわけがない。 とにかく自分は異常な事態にいるんだと思った。 咄嗟に考えてみる 今、必要なものはなんだろうか? 傘?―――光?―――蝋燭?―――目?―――灯籠?―――■■?―――ナイフ?―――本?―――情報?―――ネ■?―――  ?―――ハ■?―――! 「!?」 自然な流れで意味不明な事を真面目に考えた。 思考にノイズ発生し所々不鮮明な単語が混ざる。 ノイズ混じりの不鮮明な思考が脳を支配した。 僕の前の世界は異常な姿に変容してしまった。 そして、僕もまた、異常な思考に支配される。 右手に握った■■■に気付かぬままに
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加