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多少の疑問を胸に残しつつ、早く涼みたい気持ちから足早に駅舎へと駆けていった。
駅舎は、恐らく駅長室であろう個室と、少し短めのホームにベンチがあるだけのやけに簡素な造りだった。
「まぁ、草原があるだけの田舎臭い所ならこんなもんなんだろう」
自分に言い聞かせるようにつぶやくと、駅長室を覗き込む。
中には駅員も、汽車を待つ客もいないもぬけの殻だった。
と言うより、そもそも長らく人のいた形跡が無い。
天井には蜘蛛の巣が張り、机や椅子は鼠がかじった様にボロボロだ。
廃線……ということはない。
あれだけ生い茂っていた雑草が線路上には伸びていない。
これは最近、それも昨日今日汽車が走った事を示す。
だからと言って何時来るのかという問題は解決しない。
昨日来たから今日来る保証がないように、今日、明日、果ては一ヶ月先にも来ない……
時刻表が無い以上、そんな可能性もあるのだろう。
俺に出来ることといえば……
「慌てなーい慌てなーい。一休み一休み」
待つことぐらいだ。
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