It's Another World

5/20
前へ
/142ページ
次へ
多少の疑問を胸に残しつつ、早く涼みたい気持ちから足早に駅舎へと駆けていった。 駅舎は、恐らく駅長室であろう個室と、少し短めのホームにベンチがあるだけのやけに簡素な造りだった。 「まぁ、草原があるだけの田舎臭い所ならこんなもんなんだろう」 自分に言い聞かせるようにつぶやくと、駅長室を覗き込む。 中には駅員も、汽車を待つ客もいないもぬけの殻だった。 と言うより、そもそも長らく人のいた形跡が無い。 天井には蜘蛛の巣が張り、机や椅子は鼠がかじった様にボロボロだ。 廃線……ということはない。 あれだけ生い茂っていた雑草が線路上には伸びていない。 これは最近、それも昨日今日汽車が走った事を示す。 だからと言って何時来るのかという問題は解決しない。 昨日来たから今日来る保証がないように、今日、明日、果ては一ヶ月先にも来ない…… 時刻表が無い以上、そんな可能性もあるのだろう。 俺に出来ることといえば…… 「慌てなーい慌てなーい。一休み一休み」 待つことぐらいだ。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加