311人が本棚に入れています
本棚に追加
ホームの脇に置かれた、これまたこの駅にあう木製ベンチ。
ペンキの剥がれ具合や、割れた板がこの場から浮く事なくうまくマッチしていた。
日影良し。
風当たり良し。
一人分のスペース良し。
いやぁ、なかなかの優良物件ですな。
「これならいけるか……?」
割れた部分は背もたれの端だから問題なし。
ベンチの脚を蹴ったり板を手で押して安全を確認する。
うん、具合良好。
「さてさて、取り敢えずは寝ましょうかね」
履いていた靴を脱ぎ捨て、ごろりと狭いベンチに寝転がる。
……物の数分で寝息が聞こえるようになった。
――――――――――――――
「……ぉ……ぃ……ぉーい……」
身体が揺れる。
鳴り響く汽笛に自分を呼んでいるのであろう声。
寝汗なのか、嫌に身体中がべたつく。寝苦しい。
起きる要素は完璧な程に揃っている。
おし、起きよう!
「ん……あと5時間」
「甘えんなガキィィィ!!」
断罪チョップが腹を二ツに叩き折った。
最初のコメントを投稿しよう!