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携帯は解約した。
電気水道は勿論、保険や学校も辞めて来た。
金も全て慈善団体に寄附。
家だけは……まぁ気まぐれで残しておく。
何年かすれば日下部仁様御殿が建つかもしれないしな!!
まぁ、それももう拝むことは出来ないだろうが……
再びディスプレイを覗き込む。
――1:58
いよいよか。
姿見の前に立ち、時を待つ。
親父の書斎を漁り見つけ出したノート。
そこに記されていたのは異世界への行き方だった。
『自分より巨大な鏡の前、午前2時にチケットを持って立つ』
ノートの最後に赤いペンでそこだけ大きく丸をしてあった。
――1:59
正直、第三者が俺を見れば皆口を揃えて愚か者だと嘲笑うだろう。
しかし目に見える証拠こそないものの、俺は確信していた。
親父は俺の父親。
この天才の親というだけで信じるに充分値した。
もうすぐ……
いやがおうでも高鳴る胸を押さえつけながら、湿る手でチケットを握りしめた。
――2:00
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