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鏡に映る自分の姿が歪む。
「いよいよか……!!」
口角が釣り上がり、チケットを持つ手がまるで何かの中毒かのように震える。
本当に異世界がある。
それだけで俺は今までにない喜びを感じていた。
鏡は澱みを見せ、この部屋とは違う世界を映し出した。
何処までも続く階段。
白い空間に階段があるだけ世界。
異空間が映る鏡に手を延ばすと、その指先は硝子にぶつかる事なくその世界に溶け込んだ。
「ふ……ふふ……ふはははははは!!」
自分でもびっくりするくらいに声が出た。
それ程に自分は喜んでいる。
さて……行くか。
「この天才日下部仁に不可能はねぇ!! 次は異世界でてっぺん取ってやる!
一世一代のサクセスストーリーだ!!」
声高らかに叫びあげると、その足を一歩、前へと進めた。
身体が全て包み込まれるとそこに仁の姿は無く、鏡も光を発する事はなくなった。
仁がいなくなり音が無くなった部屋で、ディスプレイだけが時を刻んだ。
――2:01
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