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「ごわすっ!?」
なまじ歌なんて歌っちゃてたもんだから舌を噛み、自分でもわけのわからない言葉を発する。
舌と額の痛みに、苛立ちはMAX。
ククク……びびらしてやんよ。
「いっっっってぇな!!
何処に目ん玉つけてんだごらぁ!?」
自分はどうなんだ? なんて言葉は全部クーリング・オフする勢いで怒鳴り散らす。
が、相手は人ではなく無機物。あんなに遠くに見えた駅舎だった。
有り得ない……実際、あの方法で体感時間がズレようが、それは大きくて僅か5分前後だろう。
それが数十分歩いて着けなかった場所に、こんな方法を使った所で着けるわけがない。
あるとすれば――
「魔法……か?」
親父のノート、異世界への行き方の隣に小さく書きなぐられた『魔法』という文字。
他の字とは筆跡も筆圧も違う、明らかに逸したモノだったが、特別気にも留めていなかった。
これも魔法が原因……?
――ないか。
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