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0時を過ぎると周りから音と光は失われ、闇と棺と異様に大きな月が不気味に世界を彩る。
毎夜訪れるこれがどういうものなのかはわからないが、この現象が起こるようになったのはつい最近の事だった。
2週間ほど前、春休みが始まり、打ち上げと称してクラスメートが集まったことがあった。
それが終わってからも二人そろって浮かれいた僕と奏は、色々と寄り道をしながら帰っていた。
そろそろ帰らないとまずい、となって帰る途中、気がついたら0時を過ぎようとしていた。
「あれ、なんか変じゃない?」
最初に異変に気づいたのは奏での方だった。
「何が?」
「なんて言うか、ここってこんなに暗かったかなって。それになんか不気味って言うか……、ぁ」
そう言って奏は空を見上げたまま言葉を失い、僕はそれに従うように、同じく空を見る。
それで、ようやっと気づいた。
それは、巨大な月だった。
周りの明かりは、この月の光のみ。
ただ、その光は光とは言えないような、『恐怖に近い何か』を感じさせるものだった。
「行こう」
不気味な光を放つ月から目を外し、奏の手を引いて走った。
途中、黒い何かが幾つか立っていた気がしたが、それよりもまず、家へ帰ることを優先した。
おかしな街を駈ける僕と奏は途中で人に出会うことはなく、その事に何かを感じながらも互いに一言も言葉を発さずに走り続けた。
程なく家へたどり着いたが、何時間も走ったように呼吸が荒い。
身体にも異様な疲労感が溜まっていた。
急いで扉を開け、中へ入る。
まだ二人とも寝てる時間ではないはずなのに、家の中の電気はついていなかった。
「ねぇ、とりあえずリビングに行こう」
奏の言葉に頷き、リビングの扉を開ける。
「え……?」
やはりそこに叔父さんや叔母さんは居なかった。
代わりに暗いリビングの中で、棺のような黒いオブジェが2つ、テーブルを挟んで向かい合うように立てられていた。
でも、その位置はまるで――
「なんだ、帰ったのか。随分と遅かったな」
刹那、リビングの蛍光灯は部屋を照らしていて、叔父さんと叔母さんは目の前のテーブルに着いてお茶を飲んでいた。
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