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そのあとわかった事は、0時にから始まり、しばらくすると終わるこれは、機械などはすべて止まり、僕と奏以外の人間は棺のような黒いオブジェになること。
あと、当然と言えばそうだが、終わればまた0時から動き出す時計は、確かに時間は合っていること。
それから暫くして、私立月光館学園からの書類が届いた。
内容は、『有里湊と有里奏を陸上の特待生として招待したい』と言うものだった。
内容としておかしな事はないことはないのだが、あまりにも突然すぎた。
それは奏も訝しがっていたが、寮が与えられ、寮費を含む学費のすべて免除するというものにお互いが惹かれた。
それまでも訳あって転々としてきていたが、此処なら誰にも迷惑をかけずにすむ。
――それに、やはりこの急な申し出が偶然とは思えなかった。
もしかしたらこの謎の現象について、何かわかるかもしれない。
そう思ったからこそ、この話を受け、転校する事を決めた。
「着いた」
「……随分綺麗なところね」
地図通りならここが待ち合わせとなっている寮で間違いないはずだ。
だがこれは寮と言うにはどうも豪奢すぎるような気がする。
まるで西洋の古い洋館のようだったが、大きな扉の横には『厳戸台分寮』と書かれた立て看板が掛けられていた。
「どうする?」
「うーん、人がいても今は棺だからな」
「私はとりあえず建物の中の方がまだ安心出来るんだけど……」
不安げに奏は顔を俯かせる。
いつの間にか僕の腕に巻き付いていた奏が僅かに力を込める。
今までこの現象で自分たちに何かしらのことは起こった事はないが、それでも不気味だし、怖くもある。
そうだな、と呟いて僕は寮の扉を開けた。
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