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「只今この近辺ををS級の犯罪者が逃走中でして……そのような男をみかけませんでしたか?」
この時、アリスの心臓はドクンと激しく鼓動を波打った。
(S級……ですって!?)
犯罪者はE~Sでランク付けされていて、E級程度なら無銭飲食等の低級犯罪者。
しかしS級ともなれば大量惨殺、国落とし等、歴史の教科書に載る程の大罪。
だが、S級の犯罪者は必ず3日以内には世界中へ通達する義務がある。
ここ数年で伝わってきたS級犯罪者はピエロ=ジョーカーと、グラン=ライネル。
二人共3、40の男で、ジェイドとは一致しない。
向こうの手違い、若しくは嘘をついている事になる筈。
しかし……
(もし……もし本当にジェイドが犯罪者だったら?)
ジェイドが本当にS級の犯罪者ならば、一人の少女が個人の感情で逃がしていい相手なんかじゃない。
アリスは真実と虚構の扉を前にして、激しく揺れ動いていた。
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