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「ハッ……ハッ……ちっ! しつこいなちくしょうが……」
雑草が腰まで生い茂るような草原を駆け抜ける少年。
月明かりの下に見え隠れする顔は中性的で、美少年という言葉がしっくりくる。
月光に照らされて輝くツヤのある黒髪は、後ろで結んでいても一際の存在感を放つ。
「俺は……自由になるんだ……!」
少年は一心不乱に草原を掻き分けて走る。
「いたぞ! 逃がすなぁ!!」
「草が邪魔だ! 切って進め!」
少年の後ろから聞こえてくる男のドスの効いた声と馬の蹄が地面を蹴る音。
それも複数。
どうやら前を行く少年を追っているようだ。
切れ味のよい剣は易々と草を切り刻み、確実に距離を縮めていく。
「おーおー良く切れる剣なことで……その剣で俺ごと真っ二つってか? くそっ…………ん?」
少年は進路方向とは少し外れた所に、道悪そうな森を見つける。
「ハハ……神様ってのはいるもんだな!」
少年は迷わず森へと入って行った。
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