少年はピエロ

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「たあぁぁぁぁ!!」 少女は恐怖心を振り払うように大声を出しながら、勢いよくドアを開けて特攻をかける。 「あ、あれ?」 しかし、部屋の中には誰もいなかった。 いつものドレッサーにいつものベッド。いつものレースのカーテンが風に靡いているだけ。 違いと言えば、ガラスがそこかしこに飛び散っていることくらいか。 「なんなのよ……んぐっ!?」 少女は突如体を羽交い締めにされ、口が手で覆われてしまった。 相手は男。圧倒的な力に全身を支配されて身動きが取れなかった。 押し殺していた恐怖が、ダムが決壊したかのように一気に込み上げる。 身体が震え、全身に力が入らない。用意していたフライパンも落としてしまった。 怖い……それだけが少女の頭を駆け巡っていた。 涙が頬を伝う。 それに動揺した侵入者は咄嗟に少女を解放する。 「ま、待て! 俺は危害を加えるつもりは無い!! だから泣くの止めてくれ!!」 少女を押さえ付けていたのは同世代の美しい少年だった。
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