空中禁匣

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保護…? どういう意味だろう。 ていうか義務なんかあるのかな。 でも“おとうと”なんだよね。 「あの…保護って具体的に何をすれば…」 「僕に居場所を提供してください」 さらりと答えられて 私はなるほど、と合点した。 「じ…じゃあとりあえず 私の実家に連絡してみますね お母さんに話せばきっと…」 携帯を取ろうと腰を浮かせた私の手首を、少年は強く掴んだ。 「それは困ります」 「え?どうして? だっていま居場所って… 私の実家を…」 「勝手に早合点しないでください 僕がいつそんなことを頼みました?」 ぎりぎりと締め付けられる手首。 弟ぎ…もう“疑惑”はないか。 学ラン少年の瞳はどこか必死で、実家で飼っていた犬のハチミツを彷彿とさせた。 ちなみに雑種。 「け、けどじゃあどうすれば… 部屋を借りるにも、私にはそんなお金…」 私はこたつに座り直しながら訊いた。 片手を掴まれたままで、 若干ふらついてしまう。 早く離してほしい。痛い。 「部屋ならここにあるじゃないですか」 少年は悪魔的に微笑んでみせた。 「え?」 「この部屋に僕を住まわせてください」 刹那、頭が真っ白になった。 「え?え? それって私に出ていけってことですか?」 「何をとんちんかんなことを言っているんです? 一緒に住めばいいじゃないですか “共同生活”ってやつです または…同棲?」 一体この子は何を言っているんだろう。 住む?私一人用のお城に? エマージェンシー エマージェンシー 私は学ラン少年の右手を振り払って立ち上がった。 「で、でもでも!! この部屋8畳しかないし… 二人で暮らすには狭いですよ!!」 直後、彼は我が家に来て初めて隙のある表情を見せた。 ふ、と笑って目を細める。 先刻のような悪魔的な笑みではなく、年相応の人懐こいものだ。 「…そこですか? もっと他に意見すべき所があるでしょ」 意見すべき所が多すぎて 優先順位なんか気にしてませんでした。 「僕は狭くたって一向に構いません」 私は構います。 「8畳を二人で分けて一人4畳ですね 充分じゃないですか」 冗談じゃないです。 「冗談じゃない って顔ですね」 嗚呼きっと彼は読心術を心得ているのだ。
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