~ 初瀬風 ~

15/15
前へ
/1308ページ
次へ
私は、そのまま、後ろへ振り向いた。 「うちも困った。って……。 お咲さんも、タイムスリップしたってことですか?!」 信じてないはずなのに、思わず詰め寄って、お咲さんに質問する。 「そうや。龍馬さんよりも、古い時代やけどね。」 髪結いの道具を片づけながら、お咲さんは答えてくれる。 「あの人、私の3年後から来たって……。」 思わずつぶやく私に、 「あら、じゃあ、近いんやね~。 うちは、昭和」 ふふふ。と、笑い、戸口を開ける。 そこには、しゃがみこんだ男の後ろ姿があった。 「龍馬はん、終わりましたえ。 えろう、可愛いなりましたわ」 おう!と、男が振りかえる。 そのまま、目尻を下げ、 「えろう、別嬪さんじゃな~。 連れて歩くのが、嬉しくなってしまうの!」 「…………」 思わず恥ずかしくなるような事を、さらりと、男は言ってのける。 「そいじゃ、行くか!」 そういって、歩き出す。 お咲は、「また後で」と、送り出してくれた。 .
/1308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5711人が本棚に入れています
本棚に追加