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私は、そのまま、後ろへ振り向いた。
「うちも困った。って……。
お咲さんも、タイムスリップしたってことですか?!」
信じてないはずなのに、思わず詰め寄って、お咲さんに質問する。
「そうや。龍馬さんよりも、古い時代やけどね。」
髪結いの道具を片づけながら、お咲さんは答えてくれる。
「あの人、私の3年後から来たって……。」
思わずつぶやく私に、
「あら、じゃあ、近いんやね~。 うちは、昭和」
ふふふ。と、笑い、戸口を開ける。
そこには、しゃがみこんだ男の後ろ姿があった。
「龍馬はん、終わりましたえ。 えろう、可愛いなりましたわ」
おう!と、男が振りかえる。
そのまま、目尻を下げ、
「えろう、別嬪さんじゃな~。 連れて歩くのが、嬉しくなってしまうの!」
「…………」
思わず恥ずかしくなるような事を、さらりと、男は言ってのける。
「そいじゃ、行くか!」
そういって、歩き出す。
お咲は、「また後で」と、送り出してくれた。
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