~ 花信風 ~

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あれから、かなりの時間が経った。 私は、清水の舞台に佇んで、ぼんやりと人の流れを見ていた。 同じようで、同じではない景色。 タイムスリップなんてありえない。 そう思っていたのに、ここに来るまでの道中、知っている場所や変わっている場所を、見ているうちに、納得せざる負えなくなっていた。 男……、龍馬さんは、舞台に座り込み、柱にもたれている。 「本当に……、幕末なんだね」 そう呟く私に、 「その言葉は、今後、使っちゃならんきね」 静かに、そう言った。 「そんなこと、誰かに聞かれちゃら、おんし、切られるぜよ?」 そう言って、静かに笑う。 先ほどまでの、陽気な彼ではなく、今はとても穏やかで、安心できる。 .
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