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私は、龍馬さんへと振り返り、改めて目を見詰める。
「さっきまでごめんなさい。信じるよ」
その言葉を受けて、ふっ、と優しく笑う。
まだ肌寒い風が、無造作にまとめた龍馬の髪を、揺らした。
「信じるしかないよ。 一応京都に住んで長いしね。 これだけ見たら、納得す。」
私が、京都に越してきたのは、小学生の頃。
もう、10年は京都に住んでいるのだから。
「私の名前は、藤翁瑞姫(ふじおうみずき)。
改めてよろしく、龍馬さん」
歴史の偉人に、自己紹介しているなんて、なんだか変な感じだ。
「瑞姫ちゃんか~。よろしくの」
と、手を差し出してくる。
その手を握り返す、大きく暖かい手だ。
「わしは、坂本龍馬じゃ。……今はの」
少し悲しげな顔をする。
そうか、私と同じように時を越えてきたのなら、元の名前があるはず。
「まさか、坂本龍馬が未来人だなんて、思ってもみなかったよ。」
そう言って、龍馬の隣りへ腰を下ろす。
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