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わしの親父は、そこそこ大きな会社で社長なんぞ、やっとってな。
高校一年の夏休み、親父の仕事について、一緒になって、あちこち飛び回っちょった。
楽しゅうての~。
その日も、空港から、セスナに乗って九州に向かう予定じゃった。
最初は順調じゃった。
いつもと変わらん。
慣れたもんじゃち。
気付くと、いつの間にやら天気が崩れてきていての、あっという間に大雨じゃ。
機体のバランスを取れんようになったのか、親父が何か、叫んじょった気がする。
けんど、気づいたら……。
川の横で気を失っちょった。
「そこにおるがは、誰じゃ?!」
大きな声がしての~、慌てて振り向くと、着物に袴姿の、男が走って来ちゅう。
近づいて来るにつれ、それが、自分と同じ位の年の男じゃと、わかってのお。
剣道でもやっとんのかと、考えた瞬間、自分の目を疑ったちゃ。
走ってくる男の顔は、わしにそっくりじゃった。
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