~ 初瀬風 ~

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「えっと……じゃあ、行きますね。」 そう言って、人々を掻き分け、一歩踏み出す。 結構、大きな道なのに、やはり舗装されていない道。 そして、着物を着た人々。 「あれ?」 こんな場所……あったっけ? それと同時に感じる違和感。 なんだ? ぐるりと、あたりを見回してみる。 なんだろ? 何が、おかし……い? どくん。 鼓動がひとつ跳ねた。 「な……んで?」 どこを見回しても、ビルが見えない。 昔ながらの、京都の家が立ち並ぶだけ。 いつものバス通りから、必ず見えるはずの、京都タワーも見当たらない。 あんなに、目立つものが見えないだなんて、あり得ない。 それと、音。 人々の喧騒。 それは、同じ。 でも、やはり聞こえるはずの、車の音や空調音、そういった、機械的な音がしないのだ。 よくみれば、電線が……無い。 電信柱、看板、電灯、見慣れているはずの当たり前の物が、見当たらない。 「どこかに……、連れてこられちゃったの?」 呟いてみるも、それにしたって、おかしい。 どんな田舎だって、当たり前のようにある物が、すべて無いのだから。 .
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