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呆然と、立ちすくんでいると、周りを囲んでいた人々の中から、声が掛った。
「あんた、もしかして、嶋原から、抜け出して来はったん?」
「は? 嶋原?」
嶋原って……、あの嶋原?
どうして、ここで、嶋原が出てくるの?
「そのなりや、普通に出かけてきたん違うやろ?」
なるほど。と、周りの人々は納得している。
「悪いことは言わん、戻り。」
そう言って、距離を置いていたはずの人々は、少しずつ、距離を縮め始める。
「え? え? ちょっと!」
焦っていると、後ろの方から、ばたばたと、足音が聞こえてきた。
振り返る前に、ぐいっ!と腕を引かれる。
「なんちゃー。おらんと思うたら、こげな所に、居ったちやー。」
「はい?!」
よくわからないまま、体ごと抱えられ、引きずって、歩き出される。
「もし、お武家さま?」
まわりを囲んでいた人々も、困惑気味だ。
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