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「がっつく人は嫌われるよ?…って人じゃないか」
すでに他の女達をそれぞれの家に避難させてあったので、思いっきり暴れられると右拳を力強く握る。
4足で器用に走り突進してきた魔物を正面から右に避け、足を封じる為に左後ろ足の関節を狙って、体重を乗せた左足を力一杯ぶつけた。
魔物の関節の壊れた音が聞こえ、魔物の動きが鈍っていく。耳をつんざくような鳴き声を上げて私にぶっとい真っ赤な右腕を振り下ろすが、足を広げて重心を下に移動して踏ん張ってなんとか両腕でガードした。
その真っ赤な腕に指を食い込ませてガッチリと掴み、思いっきり捻る。
バキバキと鈍い音をたてた腕を支店に容赦なく魔物の図体を放り投げた。
その体の重さに勢い余って体が地面に投げられて尻餅をついた。
すぐに上体を立て直して魔物の次の攻撃に備えて…のはずが、
10M先に転がってる魔物の目は伏せられていて、ぴくりとも動かない。
仕留めたか、とふぅと息を吐き、魔物の図体を引きずって森の中に置いて魔物を退治したことを村の女に知らせた。
しかし、私を見ても怯えたような目を向けてそそくさと家の中に戻ってしまう。
「酷いわよね。フェアリスは村を守ってくれたのに、お礼の一つもしてくれないなんて」
「…リアス」
いつのまにか私の横にいたリアスはムスッと頬を膨らませて家を睨む。
「いいのよ。村を護るのが私の仕事なんだから。村人に危害が無くてよかったわ」
「フェアリスは優しすぎなの!あいつら、フェアリスが村を護ったために傷を負ったって心配も気にもとめないじゃない!そんなのあんまりだわっ。フェアリスも――」
「はいはい。いいから家に戻りましょ」
まだプンスカしてるリアスを宥めながら、リアスの背を押して私達の家へと戻る。
空はすでに山吹色に染まり、まだ冷たい風が空を舞う。
この時、私はまだ知らなかった。
私の運命はすでに変わってきていたことに…
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