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そんなことを紹介していたら、リアスが木でできた器に釜戸で煮込んでいた具だくさんのスープをいれて私に手渡してくれた。
美味しそうな湯気と香りにお腹が鳴るのを押さえて、添えてあったスプーンで一口。
「…ん。おいし」
「ふふっ。今日はいっぱい作ったのよ。たーくさん食べてね」
リアスは笑いながら自分も椅子に座ると、テーブルに置いた器のスープをスプーンですくう。
それらを全て右腕だけでこなすのは、流石。
リアスの、長めに垂れ下がった民族衣装の左袖が力無く風に揺れる。
このリリ村では、掟として5歳になったら左腕を切り落とさなきゃならない。左腕は昔から悪魔の住む腕とされていた。
しかし、この村を敵や魔物から護る“使嚇”と呼ばれる1人は左腕は切られない。両腕がないと不便だし、左腕の悪魔の力を借りてでも護るということが暗黙の了解としてあるようだ。
「……で?今日はどうだったの?何体?」
「今日は5体。今回は少し手こずったよ」
「ふふっ。そんなに血を浴びてくるんだもんね。それ、全部返り血でしょ。…フェアリスに何もなくてよかったわ」
ふとリアスが口を開く。
リアスはいつも私のことを煩いくらい心配してくれる。
それは私がいつも血にまみれて帰ってくるからってのもあるんだけど。
私は毎日のように、リリ村付近でたむろってる他の村の奴らとか魔物を見張り、害があるようなら殺している。
それは、私の使命。
それが“使嚇”の、使命。
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