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仕事が終わって、加奈子は満の家に寄り道をした。
部屋の中に入ると加奈子が言った。
「何もない部屋ね。」
「ちょっと前は何もなくてもいいやって思ってたんですけど、これからは、少しずつ家具を増やして行こうかなって思ってます。」
満は加奈子に、座布団を渡した。
「これしかないですけど。」
そう言うと、二人して笑った。
加奈子は座布団に座ると、昨日の出来事を話し始めた。
「昨夜、彼の奥さんが妊娠してるって聞いて、私、頭に血がのぼっちゃって、気がついたら彼の家の前にいた。
彼は、私と知り合った頃には、すでに奥さんとはセックスレスだってそう言ってた。
それなのに、妊娠した・・・結局、私はずっと騙されていたんだって、そう思ったら、もう何もかもどうでもよくなって。
それで、奥さんに私たちの関係を話したの。
そしたら、奥さん急に容態が悪くなって・・・私、どうしていいかわからなくなって、救急車を呼んで、そのままその場から逃げたの。
その後、奥さんも赤ちゃんも大丈夫だって聞いて、安心した。
その間、私怖かった・・・私のせいで赤ちゃんが死んじゃったら、どうしようって・・・
怖くて、苦しくて・・・申し訳なくて・・・
私には、彼を責める資格なんてなかったのに、私は自分のやったことを全部彼のせいにして逃げようと思ってた・・・
満ちゃんが彼に言ってた言葉、二人で始めた事を、一人の責任にしたらだめだって。
自分のした事に、きちんと責任取らなくちゃいけないよね。
そうしないと、これからも同じことを繰り返しちゃう気がする。
きちんと責任取って、これからはもっとちゃんと愛せる人、見つけようと思うの。」
加奈子の震える手を、満はしっかりと握った。
「ありがとう、満ちゃんと一緒にいると、何だか幸せな気持ちになるよ。」
加奈子の言葉に、満は少し照れ笑いした。
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