プロローグ

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私の名前は、神崎 満、25歳だ。 20歳で結婚をして、23歳で離婚した。 決して、夫が嫌いで別れたわけじゃない。 離婚を決めた理由は、私に子供が産めなかったからだ。 もちろん、夫はそれでもいいと言ってくれた、けれど私は離婚を決意した。 なぜなら、 「俺の子供を産んでくれ。」 それが、彼のプロポーズの言葉だったから。 世の中は、不公平だ。 産むだけ産んで、子供を放棄する親がいるのに、私には子供を産む権利すらないのだ。 別れた後は、結構荒れたか、今はどうにか頑張って生きている。 好きな人はいない。 今でも別れた夫、慶太を忘れられないからだ。 現在、私は母と二人の実家暮らしだ。 就職活動をしたが、なかなか安定した仕事が見つからず、派遣社員で生活を支えている。 先月、3ヶ月更新で、1年半働いた会社が、不況の煽りで、私は派遣切りにあった。 だが、すぐに運良く次の職場が見つかり、私は今日これから出勤する。 人生は、苦もあれば楽もあるなんて、簡単に言ってくれるあのご老人には悪いけど、 今の私には、人生は苦以外の何ものでもない気がするのだ。 それでも、仕事があるだけマシだ、食べていけるだけマシだ。 私はそう思い、希望を持って、新しい派遣先に、第一歩を踏み入れた。
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