第一章

2/15
前へ
/106ページ
次へ
○特産業株式会社 オフィス街の一角に、その会社はあった。 (結構大きいビルだな・・・どこかで聞いたような名前の会社なんだけど・・・あぁ、思い出せない。) 満は、田舎者のように、目をキョロキョロさせながら、ビル玄関口になる大きな自動ドアを通り抜けた。 面接に来た時は、緊張のあまり感じてはいなかったが、 (やっぱり、この会社・・・どこかで聞いた事ある名前・・・) そんな気がしていた。 頭の中の記憶を辿って、思い出そうとしながら、満はエレベーターに乗り込んだ。 今日から働く職場は、10階にある。 エレベーターのボタンを押した時、ふと思い出した。 (げ・・・ここは・・・) 記憶が鮮明に戻った時には、すでに遅かった。 「神崎さん、おはようございます。」 後ろを振り返ると、面接担当だった多田 ゆかりが立っていた。 「あ!おはようございます!今日から、よろしくお願い致します!」 満の大きな元気な声に、多田は満足げに微笑んだ。 「じゃ、案内しますね、ついてきてください。」 「はい!」 元気よく返事をしたものの、脳裏に蘇る、楽しくも、切ない過去。 「泉主任、おはようございます。」 多田が、主任という男に声を掛けた。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1598人が本棚に入れています
本棚に追加