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どこかで聞いた事のある名前だ。
しかし、満にはもうわかっていたのだ。
そう、ここは紛れもなく、元夫が勤めている職場なのだ。
満に躊躇している時間はなかった。
「神崎 満です、今日からお世話になります。仕事をすぐに覚えて、皆さんのお手伝いが出来るようにがんばります。
よろしくお願い致します!」
さっきまでは、話半分に聞いていた泉 慶太も、満の自己紹介を聞くなり、満の方へ視線を向けた。
「・・・・・」
慶太は、驚きのあまり、声が出ないと言ったところだ。
それもそのはず、この主任という男が、まさに満の別れた元夫だったから。
「主任?」
慶太の表情を見た、多田が、心配そうに覗き込んだ。
「どうかされました?」
多田のその一言に、慶太は我に返った。
「え、いや、何でもありません。」
慶太の言葉を待たずに、多田は話を繋げた。
「今日から、神崎さんが経理のお手伝いをしてくれます。経験はありますが、仕事を覚えるまでは、誰か担当をつけていただけませんか?」
多田の言葉に、慶太は気持ちの整理がつかない様子だ。
「え、あ、はい。それでは、」
とっさに、すぐに出てきた名前を呼んだ。
「関田さん、ちょっといいですか・・・」
慶太が声を掛けると、目が大きくくりくりとした、愛らしい小柄の女性が近づいてきた。
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