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「まいったな…」
私は、深くーこれ異常ないほど深くーため息を吐いた。
テレビでは、今まで見ていた2時間サスペンスドラマのスタッフロールが、番組のメインテーマにあわせて流れている。
私は、もう一度ため息を吐いた。
サスペンスドラマは素晴らしい出来だった。
トリックも今までに見たことのないような斬新なもので、それを看破する論理も、単純ではあるが非の打ちようがないほど緻密なものだった。
おそらく…いや、きっとこの作品は、今後のミステリ界でも名作として世に残っていくだろう。素人の自分でもそう思うほどだ。きっと今頃ネット上でも話題になっているに違いない。
しかし…いやだからこそ、なぜもう一日早く、このドラマをやってくれなかったのか。
私は、このテレビ局を大いに怨んだ。
「…まいった…」
私は、足元に転がる右腕と頭部、そして左足の踝より下を見つめながら、もう一度ため息を吐いた。
<了>
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