プロローグ

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2011年7月15日、この日から俺は復讐のために生きると決めた。 外の猛暑とは裏腹に快適なまでに涼しい寝室で茶髪の少年クロス・ヴィレンは目を覚ました。 やや、眠気による気だるさを感じつつもゆっくりと起き上がった。 虚ろな目で一時の間、ボーッとしていると、昨日のことを思い出し、自分の左頬に触れた。 幻覚的な痛みが残る。 『国の為なら私は何だってする!お前のような甘い考えでは国は治められんのだ!』 それが父、アドレール・ヴィレンの言葉だった。 その時、クロスはそれ以上父親に何も言わなかったが、憎しみと失望の念は消えていなかった。 超大国アルヴァード帝国の皇帝アドレールは今日、12時に世界に宣戦布告を示す。 理由は将来、直面する世界的ダウラン不足に対する資源確保をいち早く行うためだった。 ダウランとは、機械工業で最も重宝される物質であった。 ─確かにアルヴァード程の勢力を持ってすれば、世界征服も夢ではないかもしれない… だが、それには多くの犠牲がつきまとう。 戦争なんて…すべきものではない! クロスは頬から手を離し、拳を握りしめた。 ─力ずくででも止めなければ…! クロスは身支度をし、最後に皇族のマントを羽織ると、全身に決意をみなぎらせながら自室を後にした。
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