21人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
クロスは玉座の間を目指し、ひたすら長く大きい廊下を突き進んだ。
懐には銃を隠し持っている。
父を殺す覚悟はできていた。
その身に鬼を宿らせ、目的地を見据えた。
すると、横の通路から男が現れた。
兄シャナイズだった。
「どこに行くんだ、クロス?」
「…皇帝陛下とお話があるだけです。兄さん」
クロスは出来るだけ柔らかい笑顔を作り、答えた。
シャナイズ・ヴィレン、自分が唯一尊敬し、信頼している人物だった。
クロスはシャナイズに勘づかれる前に、と思いその場を立ち去ろうとした。
が、すれ違う寸前にシャナイズはクロスの腕を掴み、引き留めた。
「クロス…その服の下に隠しているのは何だい?」
シャナイズが不安そうにクロスの様子を伺う。
「…た、ただの書類ですよ。ジファラン国からの…」
「……そうか。いや、邪魔をして悪かったね。
行っていいよ」
クロスは軽く頭を下げるとその場を去った。
シャナイズはその後ろ姿を思い詰めたように見つめると、通信機を取り出し躊躇いがちに耳に近づけた。
「私だ。お前たちに頼みたいことがある─。」
最初のコメントを投稿しよう!