プロローグ

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クロスは玉座の間を目指し、ひたすら長く大きい廊下を突き進んだ。 懐には銃を隠し持っている。 父を殺す覚悟はできていた。 その身に鬼を宿らせ、目的地を見据えた。 すると、横の通路から男が現れた。 兄シャナイズだった。 「どこに行くんだ、クロス?」 「…皇帝陛下とお話があるだけです。兄さん」 クロスは出来るだけ柔らかい笑顔を作り、答えた。 シャナイズ・ヴィレン、自分が唯一尊敬し、信頼している人物だった。 クロスはシャナイズに勘づかれる前に、と思いその場を立ち去ろうとした。 が、すれ違う寸前にシャナイズはクロスの腕を掴み、引き留めた。 「クロス…その服の下に隠しているのは何だい?」 シャナイズが不安そうにクロスの様子を伺う。 「…た、ただの書類ですよ。ジファラン国からの…」 「……そうか。いや、邪魔をして悪かったね。 行っていいよ」 クロスは軽く頭を下げるとその場を去った。 シャナイズはその後ろ姿を思い詰めたように見つめると、通信機を取り出し躊躇いがちに耳に近づけた。 「私だ。お前たちに頼みたいことがある─。」
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