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「何っ……未だ無傷!?……ありえん……」
忠政は強く歯を食いしばる。恐れと敬意が同時に来るという奇妙な感覚を初めて味わった。猛将と呼ばれる忠政でさえも自ら斬り込んで行った時は無傷で帰還出来る時など無い。
「故に我は他人に斬られる痛みを知らぬ。……我にそれを教えて見せよ!!」
忠勝がまた一歩前に出る。顔を覆う面の位置を直すと槍を忠政に向けた。忠政もそれに応えて刀を両手に構える。
二人の睨み合いは続く。ほんの一瞬が何刻にも思えるほどに。
先に動いたのは忠政だった。
槍の切っ先の攻撃を受けない懐に一気に潜り込み、死角になる顎の真下から刀を振り上げる。
しかし忠勝は動揺せず、刀の位置を把握してから後退してかわす。
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