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その刹那、忠政に大きな隙が生じた。それを忠勝は見逃しはしなかった。
槍の長さを活かして大きく水平に振る。忠政も反応して刀で防いだものの、左脇腹を少し斬られた。
「ぐっ……」
忠勝と距離を取り、左手で負傷した部位を押さえる。よほど槍の切れ味が良いのか、具足があまり意味を為さない。
「……今のでわかった。……お前も主人の為に命を張ってる」
一言一言を発する度に心臓が高鳴って血がとめどなく流れ出る。流れ落ちた血は指の間を縫って雑草に滴って鮮やかな赤を演出した。
「その通りだ。我は殿の為に邪魔者を排除するのだ」
忠勝は表情を緩めようとしなかった。それどころか先程よりも更に険しい顔に変化する。
そんな忠勝を見て忠政はただ苦笑いを浮かべた。
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