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「ぐっ……うおおおおッ!!」
弥七の放った一撃は忠勝の面を割る程に強烈であった。忠勝は仰け反り、手で顔を覆う。
「我に一撃を与えるとは……だが、無傷に変わりは無い!!」
忠勝は槍を振り上げた。弥七も着地はしたものの、忠勝に背を向けるような体制になってしまっている――。
「はぁっ!!」
そのまま槍が振り下ろされる。弥七は着地時に足を挫き、立ち上がれない。
「ぐぁぁぁぁっ!!……っ……!!」
忠勝の槍は幼い弥七の背中を切り裂いた。弥七の血が忠勝の黒い具足に飛び散る。あまりの激痛に弥七の叫びは声になっていない。
「痛い……痛いぃっ!!……こ、殺さないで!!殺さないで!!」
弥七の顔は血と涙でぐしゃぐしゃになっていた。それでも言うことを聞かない足と震える手で必死に草の中をもがき進む。
忠勝が恐ろしい。逃げたい。その一心で戦場を抜け出した。
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