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必死に走っているうちに家に着いた。もう深夜になっている。
「……母上……っ……母上……!」
今にも途切れそうな声で母を呼んだ。母もそんな弥七に気付いてか玄関に走ってくる。
「弥七……!?どうしたのこの傷……!!」
「戦場で――――」
そこから先は記憶が無い。
* * *
翌朝、背中の痛みで布団から目が覚めた。
自分は斬られた――その衝撃が未だに弥七の心を支配していた。
「――起きた?弥七」
「は、母上……」
母は自分の枕元に居た。目の下にくまが出来ている――。
「昨日は大変だったね」
「はい……」
飽くまでも母は優しかった。しかし、その優しさが今は弥七を苦しめている。
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