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「……すみません。父上は……」
「わかってる。今はゆっくりお休み」
母は弥七を一人にした。弥七に気を遣わせないように。
「……」
弥七はうなだれた。父に守ってもらってばかりで何もしなかった自分が憎い。
* * *
それからというものの、弥七は父の敵を討とうと兵の募集があると聞けば遠国でも出向いた。
雑兵の身分ながら次々と武功を上げ、それに伴い元服もしないうちに地位も上がっていった。しかし彼は地位が上がることに不満があった。
地位が上がれば上がるほど、この手で敵を討つ機会がなくなる。
そうして各軍を転々としている中、彼の耳に訃報が入った。
――母が亡くなった。
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