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弥七は走った。自宅への戻り方なら知っていた。
合戦の途中でその訃報が入り、具足を脱ぎ捨て、仮にも兵をまとめる立場の弥七は戦を放棄する形になった。
当然ながらその軍の総大将は弥七に追っ手を送るまで激怒。数十人の追っ手が弥七に襲い掛かって来た。
しかしその追っ手の数十人が勝負を分けたらしく、その軍は大敗したと後に聞く。
追っ手を振り切ってから弥七は更に速く走った。そんな情報を信じたくなかった。
* * *
「母上!!」
玄関の扉を勢い良く開き、母の寝室へと向かった。母がいるとなればそこしか考えられない。
寝室を見た弥七は言葉を失った。
「……母上」
母の隣には弟の虎太郎が控えていた。その母の今まで優しく接してくれたのとは打って変わった無表情な顔が嫌だった。
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