第二十五戦…全てを失った日

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「弥七……母上が病弱なのは知っていただろう」 虎太郎が立ち上がって弥七に詰め寄る。 「何故こんなことになる前に帰って来なかった?」 「……それは」 「父上の時もそうだ。父上が討たれた時、弥七は何もせずにただ逃げ出しただけじゃないか。遺骸も回収せずによく帰ってこれたね」 「……」 弥七は黙り込んだ。虎太郎の言っていることが正論過ぎて反論出来ない。 「……俺は家族を助けようと」 「家族を助ける為に合戦?父上が亡くなってからうちはもう武家の看板を取り外されているんだ。農作業に専念するべきじゃないのか?」 「……」 「……反論せず、か」 虎太郎は弥七のそばを通る。すれ違いざまに弥七の背中を強く殴った。 「ぐあっ……!!虎太郎、お前……」 弥七は廊下に膝をついた。まだ古傷が痛む。虎太郎はそれを知っていた。 「背中の傷は痛むかい?……僕が負った心の傷はそんなもんじゃない」 虎太郎は玄関から出て、弥七に向けてもう一言だけ言った。 「……弥七がそんなに戦が好きなら戦で決着を付けようよ。それなら平等だよね」 それだけ言い、虎太郎は弥七の前から姿を消した。
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