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「……青い」
忠勝は軽々と後退でかわす。まるで弥七の攻撃を読んでいたかのように。
攻撃をかわされた弥七は唖然としていた。完全に隙を突いたはずだった。
「馬鹿な……!?何故……」
「お前の太刀筋はお前の父のそれと酷似している」
忠勝は槍を地面に付け、弥七の目を睨み付けた。
「父の太刀で我を討ち取ろうとしたその意気やよし。だがそれでは我には勝てぬ」
「……くっ」
弥七は蛇に睨まれた蛙も同然だった。自分の未熟さ故に敵討ちすら出来ないのか――。
「憎しみだけの刀で討ち取られるほど、この忠勝は甘くはない。お前には忠義の心が足りないのだ」
「忠義の……心……」
忠勝の言う「忠義の心」という言葉がやけに胸に突き刺さった。
忠勝を討てさえすればそれで良いと、軍を転々としてきた自分のことを察し、忠勝は哀れんでいるのだろうか。弥七はそんなことすら考えた。
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